スローロリスの生態、魔法のような狩り&毒ヘビより危険な理由
出典:スローロリス « わるものかふぇ
2月14日の「ダーウィンが来た!生きもの新伝説」では、サルの仲間、“スローロリス"の生態がとりあげられます。
一般的なサルとは異なる性質を持っており、まだまだ生態に謎の多いスローロリス。
今回は、スローロリスがどんな生き物なのか、番組に先んじて調べてみたいと思います。
スローロリスとは?
「ロリス」はオランダ語で"道化者"という意味であり、動きがゆっくりなため、頭にスローをつけ、スローロリスと名付けられました。
平らな顔と大きな瞳を持ち、鼻は犬のように常に湿っており、高い握力の四肢を持つ小型のサルです。
尻尾は退化しているようで、ほとんどありません。
熱帯多雨林に好んで生息、夜行性であり、主に樹の上で生活しています。
おとなしい性格で、昆虫や樹脂、果実など主食にしています。
また、より小型で手足が細い「スレンダーロリス」という種類も確認されています。
生態
出典:スローロリス – Wikipedia
ゆっくりな狩り
ナマケモノと同じようにゆっくりした動きが特徴のスローロリスですが、ただ遅いだけではありません。
枝から枝への移動の時や、方向転換の時なども音をほとんど立てることなく、ゆっくりな動きを維持したまま移動します。
高い握力を持った手足を上手く使い、たとえ逆さまになっても、安定を損なうことなく、音を立てずにゆっくりと移動し続けます。
その動きはさながら"忍者"のようで、緩慢ながらも気配を悟られず、昆虫を次々と捕まえていきます。
ゆっくりな動きでは、昆虫を捕らえるのは難しいような気がしますが、実は動きがゆっくりなほうが、昆虫を捕らえるのに向いています。
昆虫の目は、早く動くものに対しての察知能力は高いのですが、逆にゆっくり動くものにはなかなか気づくことができません。
くわえて、スローロリスは夜行性のため、夜目がきかない昆虫は、音を頼りにするしかありません。
しかし、スローロリスの体毛にはセンサーの役割をする"触毛"というものがあり、これで周囲のものを避け、音を立てずに忍び寄ってくるため、昆虫は気づくこともできず、捕まってしまうというわけです。
ゆっくりなサルには毒がある?
スローロリスは、同じ大きさの哺乳類と比べると、非常に代謝が遅いという特徴を持っています。
しかし、彼らは遅い代謝とは裏腹に、エネルギーが高めの食事をします。
食事の割合は、樹液(34.9%)、花蜜(31.7%)、果物(22.5%)、昆虫や鳥の卵など(10.9%)となっており、どちらかというと植物が多めです。
遅い代謝やゆっくりとした動きは、食事として取り込んだ植物や昆虫の、解毒を行うためだと考えられています。
スローロリス属は肘の内側に匂いの元を分泌する腺を持っており、それを舐めることで唾液に匂いの元を含ませ、グルーミングによって全身に広げます。
親は子供の体にもグルーミングを通して匂いを分け与え、外敵に襲われた場合は、体を丸くして唾液を塗った毛皮を剥き出しにして、自分の身を守ります。
また、この匂いの元は唾液と混ぜることで毒になり、とっさの時には、噛み付くことで効果を発揮します。
なお、スローロリスの持つ毒は、飲んだとしても消化器で分解されてしまうタイプのもので、ヘビの毒と同じように、外から注入することで効果を発揮します。
なので、スローロリスが誤って飲んでしまってもダメージはありません。
毒の強さはよくわかっていませんが、「ヤマカガシ(蛇)と同じレベルの毒がある」という説があります。
なお、そんな毒を持っている生き物を、ペットとして飼うのは危険だと思われますが、飼育用の個体は牙を抜いてあるので大丈夫なんだそうです。
絶滅危惧種
スローロリスは、ワシントン条約で絶滅危惧種に指定されている動物であり、現在は飼育することができません。
森林伐採などによる生息地の減少や、ペット目的や漢方薬の材料目的による乱獲で生息数が減少し、第14回ワシントン条約締結国会議において、国際取引が禁止される種に指定されました。
以前は日本にも輸入されていましたが、2000年以降は合法的な輸入は行われておらず、密輸しようとして摘発される事件がたびたび確認されています。
また、スローロリスは非常にデリケートな生き物であり、風邪や虫歯ですら、命に関わるため、飼育するのは困難を極めます。
人工繁殖もとても難しく、動物園でさえ繁殖実績はほとんどありません。
スローロリスを飼っていた芸能人
実はこのスローロリス、ベッキーさんが昔飼っていた事があります。
名前は「しらす」。
2013年に亡くなっています。
スローロリスは現在は飼育できませんが、ベッキーさんは規制される前から飼育していたようです。
まとめ
まだまだ謎の多い生き物であるスローロリス。
絶滅危惧種ということもあって、安易に生態研究ができないからなのかもしれません。
生息数が増加し、絶滅危惧種でなくなる日がくるといいですね。