三毛猫の99.9%がメスである理由|遺伝によるオスの希少性と神秘性とは
「白」「茶色」「黒」の3色の毛が特徴の日本猫である「三毛猫」。
日本では比較的よく見かける猫ですが、実は三毛猫の99%以上がメスだということをご存知でしょうか?
いったいなぜそこまでメスの確率が高いのか、その理由について探ってみました。
三毛猫のオスは滅多に生まれない
三毛猫は三色の毛があることが条件
まず三毛猫の定義ですが、一般的には「白」「茶色」「黒」の3色の毛が発現していれば、三毛猫と判断しても良いそうです。(実際にはもっと複雑なのですが、ちゃんと3色があることがなにより重要)
三毛猫は日本ではさほど珍しくありませんが、日本国外ではそこそこ珍しい動物であり、海外では「キャリコキャット」「トーティ・アンド・ホワイト」などとも呼ばれます。
三毛猫は遺伝的におよそ99.9%がメスであり、オスが生まれる確率は信じられないほど低く、非常に貴重となっています。
また、この特異ともいえる遺伝性質から「遺伝学の教科書」などでは、特殊な例として挙げられることの多い動物です。
オスが生まれる確率とその理由
三毛猫のオスが生まれる確率はとんでもなく低く、およそ数万匹に一匹程度と言われています。(よくいわれるのは3万匹に1匹)
確率にすると「0.001%~0.003%程度」という数字になり、いかに低い確率であるかが分かると思います。
なぜここまでオスの三毛猫が生まれる確率が低いかというと、それは三毛猫の持つ遺伝子の特質性にあります。
この話は非常に難解であり、「三毛猫の遺伝」について詳しく書くと、本が一冊かけてしまうほどの量になってしまいます。
詳しい内容は割愛しますが、要は「毛の色が3色になる染色体の組み合わせ」では、そもそもオス猫が生まれる可能性が0になってしまうということです。
まず、前提として「オス猫:XY」「メス猫:XX」という遺伝子を持っています。
毛の色の中で、「白」と「黒」に関しては常染色体上にあるのですが、唯一「茶色(オレンジ)」という要素を決定するO遺伝子に限っては、X遺伝子上にしか存在しません。
毛の色が三色として発現するためには、X遺伝子が1つでは不十分であり、必ず2つ保持する必要があります。(X遺伝子1つだと2色になる)
すなわち、「XX」であるメス猫は3色になる可能性がありますが、「XY」であるオス猫では3色が発現することはありえないのです。
オスの三毛猫が生まれるためには、いわゆるクラインフェルター症候群と呼ばれる染色体異常によって「XXY」という遺伝子を持った場合、もしくはモザイクと呼ばれる染色体異常によって「XX/XY」という遺伝子を持った場合に限られます。
そういった極めて稀なケースに限り、「毛色が3色であること」と「オス」という複合条件が成立し、極めて低い確率でオスの三毛猫が生まれるというわけです。
なお、染色体異常の個体の場合には生殖能力がない場合がほとんどであり、生殖能力のあるオスが生まれる確率はさらに低いものとなっています。
貴重ゆえに福を呼ぶ?
三毛猫のオスは、このあまりに低い希少性によって「船に乗せると福を呼び、船が遭難しない」などの言い伝えがあるそうです。
また、縁起物である「招き猫」などのデザインにおいても、三毛猫がモデルとなることが多いとされます。
オスの三毛猫はかなり貴重であるためか、ときには高値で取引されることもあり、テレビで紹介されたオスの三毛猫には「3000万」という値段がついたこともあるのだとか。
4つ葉のクローバーのように、希少とされるものには「幸運の象徴」という神秘的なイメージがつきやすいといえるでしょう。
まとめ
単純にオスが生まれる確率が低いわけではなく、「大半のオスは三色にはならない」という話なのですね。
とはいえ、普段三毛猫を見かけても、そもそもオスメスの判別なんて簡単にはつかないので、いたとしてもスルーしてしまいそうです。
あまりにも低すぎる確率なので、そうそうお目にかかれるものではないですが、もし幸運にもオスの三毛猫に巡り合うことができたら、何が良いことがあるかもしれません。