マリアナスネイルフィッシュとは?水深8178mで撮影された深海魚
8月27日に放送される「NHKスペシャル ディープオーシャン 超深海 地球最深(フルデプス)への挑戦」の中で、マリアナ海溝の深海に生息するマリアナスネイルフィッシュという魚が取り上げられるようです。
まだまだ未開の地とされる深海で発見された生物だけに、いったいどんな生物なのか興味をそそられますよね。
調査によって発見された深海魚はどんな生き物なのか、詳細について調べてみました。
マリアナ海溝で発見された深海魚
マリアナ海溝といえば、地球上で最も深い海溝であり「海淵」などとも呼ばれます。
どの程度深いのかはっきりしていませんが、最新の計測では少なくとも水深1万メートル以上はあるとされ、エベレストを逆さにしたとしても山頂が海底に届かないほどの深さだといわれています。
マリアナスネイルフィッシュの発見
2014年12月、アバディーン大学とハワイ大学が超深海探査機を使って行った調査により、水深8145メートルの動画の撮影に成功しました。
この時の調査で新たに発見されたのがマリアナスネイルフィッシュです。
それまでは、これほどの深さの深海はあまりにも水圧が高すぎるために、魚は生きることができないと考えられていました。
しかし、105時間に渡って撮影された動画には、スネイルフィッシュをはじめとするさまざまな深海魚が泳ぐ様子が捉えられており、これほどの深海にも適応できる魚が存在することが確認されたのです。
↓2014年の調査で撮影された動画
※1:28あたりから
マリアナスネイルフィッシュは、白いオタマジャクシのような姿をしています。
体は白く半透明になっており、羽の様に広がったヒレをもっていて、尾はウナギに近い感じに見えます。
頭は比較的大きいですが、目は退化しているのか非常に小さいのが特徴です
泳ぎ方はゆらゆらとしていて、まるで幽霊のようだともいわれ、ゴーストフィッシュなどとも呼ばれています。
この魚は分類上、カサゴの一種であるクサウオ科の新種とされ、シンカイクサウオの仲間とされています。
調査に参加していた、アバディーン大学のアラン・ジェミーソン博士によると「ティッシュペーパーが水に浮かぶようにゆっくり泳ぎ、漫画の犬のような奇妙な鼻をしていた。その姿は非常にはかなげだった。」とのこと。
水深8000m以上で生息しているところから、凄まじい水圧に適応できるだけの能力を持っているのは間違いないですが、動画に映っていた以外のことは不明なままでした。
新たな調査でもその姿が確認される
2017年8月24日、海洋研究開発機構がマリアナ海溝での調査によって、新たな動画撮影に成功したというニュースが発表されました。
今回は水深8178メートルでの撮影であり、深海での魚の撮影記録を26メートル更新、世界で最も深い記録を塗り替えたのです。
しかも驚くべきことに、今回の調査ではマリアナスネイルフィッシュを捕獲することにも成功し、その生態の一部が判明したとのこと。
マリアナスネイルフィッシュの身体は普通の魚とは異なり、ゼラチンのような物質で覆われています。
これを分析した博士によると、マリアナスネイルフィッシュが超深海でも生きることができる秘密はTMAOという物質にあるといいます。
TMAOとは「トリメチルアミン-N-オキシド」という有機化合物のことで、いわゆる海産物が放つ「生臭さ」の原因となる物質です。
通常、水圧の高い深海の場合、生物を構成しているたんぱく質が水分子に圧迫されてうまく機能しなくなってしまいます。
しかし、このTMAOが体組織に多く含まれていると、水分子と結合することで圧迫を防ぐことができるため、たんぱく質が機能停止することなく深海でも生きることができるのです。
TMAOは、住んでいる場所が深ければ深いほど保持している量が増えていく傾向があり、マリアナスネイルフィッシュは現状でわかっている生物の中でもトップクラスの量を持っているそうです。
まだまだ解明されていない部分も多いですが、今回の発見によってまた少し深海の生態の一部が判明したのは喜ばしいことですね。