オーストラリアではうさぎを飼うと罰金!?繁殖力がもたらす環境被害
犬や猫とはまた違った魅力があり、ペットとしても人気があるうさぎ。
そんな可愛らしいうさぎですが、オーストラリアの一部の州ではうさぎを飼うだけで罰金刑に処される場合があるといいます。
なぜそんなことになっているのか、その理由や経緯について解説していきたいと思います。
オーストラリアでうさぎを飼うと罰金?
オーストラリア北東部に位置するクイーンズランド州では、うさぎをペットとして飼うことが法律で禁止されています。
この州でうさぎを飼った場合には、最大で44,000豪ドル(約335万円)もの高額な罰金が科されることがあるそうです。
なぜこんな規制が存在するのかというと、オーストラリアでは過去にうさぎによって深刻な環境被害が出ており、現在でもそれが解決していないからです。
うさぎは繁殖力が非常に高いうえに環境に適応しやすいため、数が増えると非常に厄介な害獣となります。
繁殖した野生のうさぎは農作物を食い荒らしてしまうので、自然植生に甚大な被害をもたらすのです。
これにより、土壌侵食や在来植物・動物の絶滅といった問題が発生するため、政府はこれ以上うさぎが増えないよう、厳しい措置を講じているのです。
なぜ罰金が必要になったのか
うさぎの問題は、19世紀中頃にさかのぼります。
1859年、イギリス出身の移民トーマス・オースティンがビクトリア州の農場に24匹のうさぎを放したことがきっかけでした。
オースティンは狩猟を楽しむためにうさぎを導入したのですが、この行為がオーストラリアの生態系に大きな影響を及ぼすことになってしまいます。
天敵の少ない環境だったため、うさぎは急速に繁殖し、わずか3年で24匹が数千匹に増えてしまいました。
増えたうさぎが農作物や牧草地を食い荒らし、これによって土壌侵食が発生。
結果的に、多くの在来植物や動物が絶滅の危機に瀕してしまうという大変な事態に発展したのです。
オーストラリア政府はこの問題に対処するために、さまざまな対策を講じました。
1901年から1907年にかけて、うさぎの移動を防ぐために3,253kmの長さのフェンスを建設。
また1950年代には、ミクソーマウイルスを導入し、うさぎの数を劇的に減少させることに成功します。
しかし、うさぎはこのウイルスに対する耐性を獲得してしまい、ふたたび数が増えることに。
そして1990年代には、ウサギ出血病ウイルス(RHDV)が導入され、特に乾燥地帯でうさぎの数を大幅に減少させることに成功。
ただ、この作戦は湿潤な地域では効果があまりなく、中途半端な結果に終わってしまいます。
現在でもうさぎの数は完全には制御されておらず、政府はこの問題に対処するため、今も新しい対策を模索しています。
このような歴史的背景から、クイーンズランド州ではうさぎの飼育が厳しく規制され、違反者には高額な罰金が科されることになったのです。
罰金にならない例外も一応ある
クイーンズランド州では、基本的にうさぎの飼育は禁止されていますが、特定の職業や目的に限り例外が認められています。
- 公的な展示やエンターテイメント:サーカスや動物園などで公的な展示を行う場合
- 研究および教育目的:大学や研究機関が科学研究や教育のためにうさぎを飼育する場合
上記のようなケースであっても、行政に飼育の許可を取らなければなりませんし、そのための厳しい基準をクリアしなくてはいけません。
一般の人がペットとしてうさぎを飼うというのは、まず無理といってもいいでしょう。
他の州なら飼育が可能なの?
クイーンズランド州以外の州では、うさぎをペットとして飼うことが許可されています。
ただし、日本のように気軽に飼えるわけではなく、ある程度厳しい条件が設けられています。
州ごとの飼育の条件はこんな感じです。
- ニューサウスウェールズ州(NSW):飼育可能。適切な住居条件と健康管理が必要
- タスマニア州(TAS):飼育可能。特定のワクチン接種が必要
- ビクトリア州(VIC):飼育可能。詳細な飼育ガイドラインに従う必要あり
- オーストラリア首都特別地域(ACT):飼育可能。州の規制を遵守することが必要
- 西オーストラリア州(WA):飼育可能。適切な飼育環境の提供が必要
- 南オーストラリア州(SA):飼育可能。州の健康ガイドラインに従う必要あり
ほとんどの州では、うさぎの飼育に関する具体的なガイドラインが設けられており、それを守らないと飼育ができません。
過去に甚大な被害を出している国だけあって、かなり厳しいルールがあるので、他の州でもうさぎを飼うハードルはかなり高いといえるでしょう。
まとめ
うさぎは可愛いだけの動物ではなく、野生化すると害獣扱いになるという側面があります。
繁殖力がとにかく強いので、野生で増殖を続けると手が付けられなくなってしまうのです。
過去にこれだけの環境被害が出ているうえ、現在でも対処しきれていないとなれば、厳しい罰金を科すのも仕方ないといえるでしょう。
日本でも、うさぎが増えすぎて飼育崩壊する事件がたびたび起こっているので、繁殖力を甘く見ないようにしましょう。