船の底の色が赤い理由は何?塗料の亜酸化銅の重要性【初耳学】
3月13日に放送される「林先生が驚く 初耳学!」の中で、藤原竜也さんが船の底の色に関する問題を出されるようです。
林先生に出題される問題は「船の底の色が赤い理由」。
いったいどういう理由で船底は赤いのか、探ってみたいと思います。
船の航行には不可欠
船やタンカーなどの船舶の場合、船体そのものはさまざまな色が使われていますが、船の底の部分はほとんどの場合、赤色で塗られています。
実はこれ、国際法で決まっている等の理由ではなく、船の航行には欠かせない大切な役割があるからなのです。
船の底の部分に塗られている赤い塗料は「亜酸化銅」と呼ばれるものです。
大小どんな船であっても、海水に沈んでいる船底部分は、どうしても海からの影響をもろに受ける部分です。何の対策もしなかった場合、あっという間に多くの水棲生物が船底に不着してしまいます。
カキや藻、海草など、いろいろなものがくっつきますが、日本近海では特にフジツボが多く付着します。
フジツボの幼体は海の中を自由に泳ぎ回っていて、常にくっつける場所を探しています。そして、フジツボは船体に一度くっついてしまうと、なかなか剥がれません。
そして、船底に大量に生物が付着すると、船自体の重さが増してしまいスピードが落ちるのに加え、重い船の動かすために余計な動力を消費する羽目になり、燃費が悪化します。
もし舵の部分に付着すれば、船の舵取りにも支障が出て、航行に重大な悪影響を及ぼします。
船底に塗ってある「亜酸化銅」という塗料は、フジツボなどの水棲生物が嫌う化学物質であり、これが塗ってあることで船底に寄ってこなくなるのです。
また、一度くっついてしまったフジツボは、剥がすのにかなりの手間がかかるのに加えて、船体を傷つけてしまうこともあるので、亜酸化銅を塗ることで、船の劣化を防ぐという効果もあります。
亜酸化銅は赤色の塗料なので、水棲生物への対策を施すと、必然的に船の底の色は赤色になります。
世界中のほとんどの船の底が赤いのは、水棲生物から船を守り、安全に航行を行うためなのです。
昔の船はどうしていた?
では、亜酸化銅が開発される前の時代はどうやって船体を守っていたのでしょうか?
大昔の木造船だった頃は、船底に何も塗っておらず、水棲生物にとても手を焼いていて、手入れが大変だったようです。
コロンブスの時代になると、船底にコールタールやオイルを塗って、水棲生物が付着しにくくしていました。
その後は、有機スズ化合物を含む塗料を船底に塗って、船底を守っていました。
しかし、後にこの塗料は環境汚染を引き起こすことが分かり、スズの代わりに環境にやさしく効果の高い亜酸化銅が開発され、現在はこちらが主流となっています。
他の色もある?
赤以外の塗料としては、青の塗料があるようです。
青色の塗料は酸化亜鉛という物質であり、スライムやアオサなどの植物類に対して高い効果を発揮するようです。その分、フジツボへの効果は亜酸化銅に比べて劣ります。
また、赤の亜酸化銅は、電気的に金属が侵されてしまう「電蝕」が起きるため、アルミ艇には使用できないという制限があります。
個人所有のボートなどでアルミ艇を塗装する場合や、FRP(繊維強化プラスチック)や木製の船底には、青の酸化亜鉛が使われます。
まとめ
あまり気にしたことはありませんでしたが、船底の赤色は船の航行上、とても重要な意味を持っていたのですね。
特に、島国である日本の物流は99.7%が船舶によるものなので、この亜酸化銅の赤い塗料の重要性は計り知れないと思います。